【書評レビュー】福田歓一『政治学史』の評価。政治学史を真摯に学ぶ方は必読。

本気で政治学史に取り組むなら必読の書

最終更新日:2017年5月10日

政治学史を教養としてではなく専門的に学ぶ学部生向けです。

東京大学法学部で多年教壇に立った著者が、政治学史の講義内容を教科書に仕立てたテキストです。
政治学ではなく、政治学史です。
古代から現代ヘーゲルまでの政治思想史を、およそ500頁にまとめてあります。

東京大学で4単位科目の講義用のテキストですから、内容も充実しています。

『政治学史』(東京大学出版会、1985年)

私の評価 ★★★★★
ページ数 548頁
著者・編者 福田歓一
出版社 東京大学出版会
出版年 1985年
出版社ページ 東京大学出版会『政治学史』詳細ページ
目次 序章 政治学史とその問題
第1章 古典古代Ⅰ ポリスpolisとその政治理論
第2章 古典古代Ⅱ 古代普遍世界
第3章 ゲルマン世界中世の政治と哲学
第4章 中世思想の崩壊 ルネサンスと宗教改革
第5章 絶対主義の時代 近代政治理論の諸前提
第6章 近代政治原理の形成過程
第7章 近代政治原理の展開過程
第8章 近代政治原理の転化過程
第9章 ドイツ哲学と国民国家
価格 5,616円

政治史思想を学ぶ前に必要な知識もあわせて学習できるため、ただ暗記する学習ではなく、背景となる歴史や社会の状況、宗教、文化など、思想が出てきた背景まで含めて学習できます。
政治思想史上の巨人たちが、どのような状況でなにを考えその思想を得るにいたったのか、また彼らがどのような人物だったのか。
興味を持ち続けて学習をすることができると思います。

例えば、「第4章 第3節 クリスト教の成立とその政治学的意味」では、「福音」の意味やヨハネやパウロの言及など、キリスト教の基礎まで学べてしまいます。

210頁「第3節ユートピア思想 2トマス・モア」の項では、

「農民は生業を失い、流浪の身となり、困窮して、治安が極端に悪くなる。これに対して権力は罰を厳しくすることで治安を回復しようとし、物を盗んだだけで私刑にするという厳罰主義をとった。モアの時代はこういう時代であった。」

として、トマス・モアが『ユートピア』を著した時代背景を説明しています。

世界史(ヨーロッパ史)を知らなくても、ほぼ問題なく理解できると思います(世界史の勉強にもなります)。

通史をひとりで書き上げている!ため、全体を通して違和感なく内容を読み解くことができます。
少し大部のテキストにはなりますが、通読する価値は充分にあります。
東大で4単位科目を受講している気分になって、じっくりと取り組んで欲しい書物です。
(4単位は200時間分の学習に相当します)

学術書の例にもれず少々高価です。
図書館などで借りることをおすすめします。
私は購入しましたが、よい買い物であったと思っています。

難解な言い回しなどはないので、政治学史をはじめて勉強される方でも問題なく読めると思いますが、
分量が多いので初めての方はもう少し薄い本から入られた方がいいと思います。
もちろん、初めてでも本書を2回3回と読めば、それなりの学習効果が望めるでしょう。

著者がこの本に込めた思いが、最終章の最後に出ていると感じたので、少し長いですが引用します。

「今日幾つものlevelにわたる重い政治の問題は、もちろん単に認識を職業とする専門人のみの問題ではなく、およそ自覚的に現代を生きようとする者のひとしく避け得ない課題である。(中略)政治学史の対象、これを構成する思想家はそれぞれにずば抜けた知的巨人である。そうであるだけに、この世界にまともに取り組むことは、決して知的に容易な作業ではない。かつて、ロダン Auguste Rodin は『はげしく自己を鍛えたものでなければ美術館を見るな』と言ってのけたが、逆に手強い相手と取り組むことを通じて、自らが鍛えられることも争いがたい真実である。この不十分な通史が、読者のそのような体験への案内、むしろ招待として用いられることを望むのは、はたして過大な期待であろうか、著者としてはもはや筆を擱くばかりである。」


およそ30年前に書かれた本ですが、真摯に政治学史を学ぶ人には是非手にとって頂きたい本です。

有斐閣「書斎の窓」にて、東京大学社会科学研究所教授 宇野重規さんは本書を下記のように評しています。 有斐閣『書斎の窓』  東京大学社会科学研究所教授 宇野重規

近代社会契約論を中心に西洋政治思想史を展望するその輝きは、いまなお薄れることはありません。ホッブズ・ロック・ルソーの3人を軸に、政治における近代とは何であったのかを論じる本書の影響は、依然として巨大です。

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