【書評】アマルティア・セン『不平等の再検討 -潜在能力と自由-』平等とはなにか

ノーベル経済学者かつ哲学者であるアマルティア・センのケイパビリティ・アプローチによる不平等の再検討

最終更新日:2017年5月10日

平等とはなにか?
何の平等なのか?
リバタリアンであれば、権利や自由の平等を中心的にとらえ、反面として所得は不平等となる。
リベラルでは所得の平等を重視し、反面として自由は不平等となる。
また、所得を平等にしても、平等とはならない。
所得が同じな2人の人がいても、1人は健康で、もう1人は治療に多額の費用が掛かるとすれば、それは平等と言えるのであろうか。

>公共政策や開発政策の目標は、人間の自由であり、主体的に選択できる「生き方の幅」(すなわち『潜在能力』)を広げることである。(251頁)

正義」を考えるすべての人に読んで欲しい。

アマルティア・セン『不平等の再検討 -潜在能力と自由-』岩波書店、1999年

私の評価 ★★★★★
ページ数 326頁
著者・編者 著者:アマルティア・セン
訳者:池本幸生、野上裕生、佐藤仁
出版社 岩波書店
出版年 1999年
出版社ページ 岩波書店『不平等の再検討』詳細ページ
目次
序章 問題とテーマ
第一章 何の平等か
  なぜ平等か、何の平等か
  公平さと平等
  人間の多様性と基礎的平等
  平等 対 自由 ?
  複数性と平等の「空虚さ」
  手段と自由
  所得分配、福祉、自由
第二章 自由、成果、資源
  自由と選択
  実質所得、機会、選択
  資源とは区別された自由
第三章 機能と潜在能力
  潜在能力の集合
  価値対象と評価空間
  選択とウェイト付け
  完全性‐原理的なものと実際的なもの
  潜在能力か機能か?
  効用 対 潜在能力
第四章 自由、エージェンシーおよび福祉
  福祉とエージェンシー
  エージェンシー、手段および実現
  自由は福祉と対立するか
  自由と不利な選択
  コントロールと有効な自由
  飢え、マラリアその他の病気からの自由
  福祉の妥当性
第五章 正義と潜在能力
  正義の情報的基礎
  ロールズの正義と政治的構想
  基本財と潜在能力
  多様性‐目的と個人的特性
第六章 厚生経済学と不平等
  空間の選択と評価目的
  不足分、到達度、潜在性
  不平等、厚生、そして正義
  厚生に基づく不平等評価
第七章 貧しさと豊かさ
  不平等と貧困
  貧困の性質
  所得の「低さ」と「不十分」さ
  概念はどれほど重要なのか
  豊かな国々における貧困
第八章 階級、ジェンダー、その他のグループ
  階級と分類
  ジェンダーと不平等
  地域間の対照性
第九章 平等の要件
  平等に関する問い
  平等、領域、そして多様性
  複数性、不完全性、評価
  データ、観察、そして有効な自由
  総体的観点、平等主義、そして効率性
  その他の不平等擁護論
  インセンティブ、多様性、そして平等主義
  社会的関心としての平等について
  責任と公正
  潜在能力、自由、そして動機
価格 3,456円

とても読みやすい本です。
1998年にノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・センの著書。
センの掲げる「潜在能力」とはなにか。
ロールズ、ノージック、功利主義など、今までの正義論はどのように批判されるのか。
自由とは、平等とは、貧困とはなんであるのか。
社会制度全般を評価することで、不平等を考え直すことを目的とした論文です。
同じだけの所得があっても、健康な人と障害のある人では得られる効用は違う。
同じくくらい低所得であっても、ニューヨークに住む人とインドの村に住む人では違う。
劣悪な環境になれた人は、わずかな喜びからも大きな効用を得るようになってしまっている。
所得でも基本財でも効用でも、真に不平等を測ることはできない。
潜在能力(ケイパビリティ)があれば、自由がある。
断食をしている人と、貧困による飢餓の状態にある人では何が違うのか。
インドの村で生まれ、300万人が死亡した大飢饉を目撃し、経済学者としてだけではなく、哲学者・倫理学者として活動を続けてきたアマルティア・センの中心的な「潜在能力説」を知ることが出来る本。
一般の読者向けですが、活字に不慣れな方には難しいと思います。
ある程度、ロールズや法理学・哲学などに触れたことがある方ならさらっと読めます。

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