【講演】小泉信三記念講座「現代日本人の死生観」上智大学グリーフケア研究所所長 島薗進

日本人は生と死をどのように考えてきたのか。息子が戦死した経験をもつ小泉信三を記念する講座に、死生学・宗教学者でグリーフケア研究所所長の島薗進さんが登壇しました。グリーフケアとは、臨床宗教史とは。現代社会で、死をどう考え受け入れるのか。

最終更新日:2017年5月10日

近年東京大学を退官された宗教学者 島薗進さんは、現在、上智大学グリーフケア研究所所長て活躍されています。
東大理Ⅲ(医学部)に入学したあとに文系に移り、宗教学の研究者として東大で教壇に立たれていた方です。

昨日(2016年9月27日)、慶應義塾大学の小泉信三記念講座に登壇され、現代日本人の死生観というテーマで講演されました。

講演のサブタイトルは「悲しみの贈り物」
悲しみは死んだ者、死にゆく者からの贈り物
として講演を締めくくられました。

講座の題名でもある小泉信三さんの著書「海軍主計大尉 小泉信吉」から、戦中の日本人の死生観に言及して講演をスタート。



講演は、次のテーマで進んでいきました。


「吉田満と生き残りの悲しみ」

戦中派の戦後の死生観。
主に、戦艦大和の生き残りであった吉田満さんを取り上げます。



「がんで死にゆく者の悲しみ」
高見順『詩集 死の淵より』を取り上げました。



「悲しむ力を求めて」
天童荒太『悼む人』を取り上げ、「祈る」ではなく「悼む」というのは、どういうことなのかにふれることで、日本人の死生観を考えます。



「悲しみに寄り添う」
東日本大震災後に被災地を訪れた宗教家たちの活動から「寄り添う」とはどういうことなのか。
死に際して、人にはなにが出来るのかを考えました。

臨床宗教師」の制度や「グリーフケア」については、はじめて知りました。


ここからは私見ですが、日本人はムラ制度やイエ制度の中で生きてきました。
そのときは、家族だけではなく、ある程度のまとまりをもったコミュニティーがありました。
人が生まれ大人になるまでの間に、コミュニティー内で多くの死や新たな誕生に触れて成長しました。
戦後核家族化が急激に進み、ムラもイエもなくなりました。
人が生まれ大人になるまでの間に、人の死に一度も触れないということも、珍しくはありません。
思春期以降は、生と死について考え始めますが、あくまで頭の中だけであり、現実に触れるものではありません。
そして、あるとき突然「死」に直面します。
そのとき、どう対処すればいいのかわからない。
戦後2世や3世の世代になり、日本人には新たな死生観が生まれていると思います。
孤立しがちな現代社会の生活の中で、人の死と死後に遺されたもののケアが大切な時代になっています。

告知ポスター

小泉信三記念講座「現代日本人の死生観」

グリーフケア

グリーフとは「深い悲しみ、悲嘆、嘆き」を意味します。
グリーフケアは、上智大学をはじめとして、だんだんと広がり始めている運動です。
上智大学では、今年から「実践宗教学研究科死生学専攻」(修士課程)が設置されました。
「スピリチュアルケア」とも呼ばれています。

小泉信三記念講座

昭和8年から昭和21年までの激動の時代に慶應義塾大学塾長を勤め、死後にその多大な功績をたたえて設立されました。
すべて無料・予約不要の講座として、毎年数回開催されています。
慶應義塾大学小泉信三記念講座


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