治安が悪くなっている!のは勘違い。戦後72年間の殺人事件数でみる体感治安と実際の治安の違い

治安は大幅に良くなっているのに、体感治安は悪化している。この差はなに?

最終更新日:2017年9月12日

戦後72年間の殺人事件・強盗事件・傷害事件と、自動車運転過失致死傷・業務上過失致死の認知件数をまとめました。
データでみると、実際の治安がどう移り変わっていったのかを客観的にみることができます。

最近、治安が悪くなったと良く聞きます。
子どもの頃からずっと聞き続けている気がします。
もし本当だとしたら、今頃北斗の拳の世界になっていそうなもんですが、実際はなっていません。

私が小学生から中学生のころまでに、実際に近くで起きた殺人事件は3件あります。
そのうち1件は有名な強盗強姦殺人事件で、もう1件は超有名な事件です。
子どもの狭い行動範囲内でも、身近に殺人事件がありました。
(たまたま特異な地域だったのかもしれませんが)

一方、大人になってから身近でおこった殺人事件は覚えがありません。

実際には、治安はとても良くなっています。

データでみてみましょう。
法務省が毎年発行している「犯罪白書」に、すべてのデータが書かれています。
http://www.moj.go.jp/housouken/houso_hakusho2.html

最寄りの図書館にも大体置いてありますが、今はすべてネット上でみることが出来るようになりました。

犯罪白書は、だいたい前年分が翌年の11月に閣議決定ののち公表されます。
昨年(平成28年)分はまだ発行されていないので、警察庁の犯罪情勢からデータを持ってきました。
こちらは大体7月くらいに発行されます。

1946年から2016年の犯罪件数

平成27年までのデータは「平成28年版 犯罪白書」 
平成28年のデータは「警察庁:平成28年の犯罪情勢」より

総数:犯罪全体の件数
殺人;殺人認知件数
強盗:強盗(強盗強姦、強盗致傷、強盗殺人)の認知件数
傷害:傷害事件の認知件数
自動者:自動車運転過失致死傷および業務上過失の認知件数
人口:日本の総人口(単位は千人)
100万人あたり:人口100万人あたりの殺人事件認知件数(独自に計算)

区分総数殺人強盗傷害自動車人口100万人
1946 1,387,080 1,791 9,120 7,927 2,858
1947 1,386,020 1,938 9,186 11,865 3,810
1948 1,603,265 2,495 10,854 21,434 3,297
1949 1,603,048 2,716 8,780 32,627 5,157
1950 1,469,662 2,892 7,821 42,769 8,618 83,199 34.8
1951 1,399,184 2,865 6,124 43,890 11,895
1952 1,395,197 2,871 6,140 48,396 17,924
1953 1,344,482 2,944 5,296 52,525 27,341
1954 1,360,405 3,081 5,753 58,545 36,072
1955 1,478,202 3,066 5,878 65,978 42,550 89,275 34.3
1956 1,410,441 2,617 5,285 66,883 56,339
1957 1,426,029 2,524 5,029 70,023 71,600
1958 1,440,259 2,683 5,442 73,985 86,329
1959 1,483,258 2,683 5,192 73,014 100,466
1960 1,495,888 2,648 5,198 68,304 117,071 93,418 28.3
1961 1,530,464 2,619 4,491 68,321 129,549
1962 1,522,480 2,348 4,142 63,918 137,696
1963 1,557,803 2,283 4,021 59,730 180,327
1964 1,609,741 2,366 3,926 61,282 224,383
1965 1,602,430 2,288 3,886 58,702 258,805 98,274 23.3
1966 1,590,681 2,198 3,558 59,080 298,590
1967 1,603,471 2,111 3,009 59,234 385,627
1968 1,742,479 2,195 2,988 57,822 510,593
1969 1,848,740 2,098 2,724 54,392 597,062
1970 1,932,401 1,986 2,689 50,836 654,942 103,720 19.1
1971 1,875,383 1,941 2,439 46,090 633,366
1972 1,818,088 2,060 2,500 43,194 596,613
1973 1,728,741 2,048 2,000 43,385 540,790
1974 1,671,965 1,912 2,140 37,687 463,298
1975 1,673,755 2,098 2,300 34,136 441,374 111,939 18.7
1976 1,691,247 2,111 2,095 32,536 445,463
1977 1,705,034 2,031 2,095 32,479 438,337
1978 1,776,843 1,862 1,932 28,938 441,629
1979 1,738,452 1,853 2,043 26,431 450,528
1980 1,812,798 1,684 2,208 26,264 456,781 117,060 14.4
1981 1,925,836 1,754 2,325 25,778 463,786
1982 2,005,319 1,764 2,251 25,202 477,646
1983 2,039,209 1,745 2,317 23,803 499,399
1984 2,080,323 1,762 2,188 23,540 492,517
1985 2,121,444 1,780 1,815 22,302 514,558 121,048 14.7
1986 2,124,272 1,676 1,949 21,171 543,631
1987 2,132,617 1,584 1,874 21,046 555,311
1988 2,207,380 1,441 1,771 21,516 566,779
1989 2,261,076 1,308 1,586 19,802 588,446
1990 2,217,559 1,238 1,653 19,436 581,616 123,611 10.0
1991 2,284,401 1,215 1,848 18,634 577,139
1992 2,355,504 1,227 2,189 18,854 613,621
1993 2,437,252 1,233 2,466 18,306 636,525
1994 2,426,694 1,279 2,684 18,097 642,687
1995 2,435,983 1,281 2,277 17,482 653,408 125,570 10.2
1996 2,465,503 1,218 2,463 17,876 653,782
1997 2,518,074 1,282 2,809 19,288 618,891
1998 2,690,267 1,388 3,426 19,476 657,099
1999 2,904,051 1,265 4,237 20,233 738,764
2000 3,256,109 1,391 5,173 30,184 813,120 126,925 11.0
2001 3,581,521 1,340 6,393 33,965 846,455
2002 3,693,928 1,396 6,984 36,324 840,453
2003 3,646,253 1,452 7,664 36,568 856,435
2004 3,427,606 1,419 7,295 35,937 865,212
2005 3,125,216 1,392 5,988 34,484 856,298 127,767 10.9
2006 2,877,027 1,309 5,108 33,987 826,447
2007 2,690,883 1,199 4,567 30,986 782,192
2008 2,541,828 1,301 4,298 28,386 715,531
2009 2,410,490 1,095 4,535 26,545 696,837
2010 2,289,472 1,068 4,051 26,634 685,589 128,057 8.3
2011 2,161,911 1,052 3,695 25,922 659,084
2012 2,036,393 1,032 3,691 28,053 633,356
2013 1,917,929 938 3,324 27,864 603,889 127,094 7.4
2014 1,762,912 1,054 3,056 26,653 550,721
2015 1,098,969 933 2,426 25,183
2016 996,120 895 2,332 24,365 126,933 7.1

「殺人認知件数」には未遂を含みます。
このため,殺人既遂の人数はこの数値よりも少なく,例えば平成28年度は「認知:895,うち既遂:338」,平成20年度は「認知:1301,うち既遂534」となっています。


ちなみに,殺人事件をもう少し詳しくみてみると(平成28年)

認知件数:895

既遂認知件数:338
既遂検挙件数:256
うち面識あり:237
うち親族:149

未遂認知件数:557
未遂検挙件数:554
うち面識あり:476
うち親族:291

となっています。

殺人事件の多くは面識のある人同士の間で起こっていて、およそ半数が親族間となっています。

殺人事件はほとんど知り合いの間で起こっているので、治安とはあまり関係ないのかもしれません。
そこで凶悪犯罪である「強盗」をみてみると、確かに2000年代前半から半ばにかけて急激に増えています。
なにか統計上の理由があるのかと思いましたが(※)、見当たりませんでしたので、実際に治安が悪化したとみていいでしょう。

※長期にデータを取る統計情報は、途中で内容が変わったりします。今まで除外されていたものが含まれるようになったり、法改正があったり。強盗に関してこのような事情はみつかりませんでした。

ですがピーク時からみると、2016年はおよそ3分の1になっており、治安はかなり良くなっているともとれます。

比較的軽い犯罪である窃盗犯についても悪化しているようにもみえますが、30年前の水準とほぼ同じで、少なくても30年前より悪化しているということはありません。
2000年代はじめと比べれば大きく改善しています。

犯罪の総数は大きく増加していっているようにみえますが、これは自動者関連の犯罪の増加によるもので、治安の悪化とは言えないでしょう。
その総数も、2016年には100万を切って、戦後最も少ない数値となっています。

人口100万人あたりの殺人事件認知件数の推移

日本の総人口と殺人事件の認知件数から、100万人あたりの殺人事件認知件数を出してみました。
60年前のおよそ5分の1、2000年からみても3ポイントも改善しています。

体感治安と実際の治安

社会学の用語で、実際の治安ではなく、人々が感じる治安のことを「体感治安」というらしいです。

おそらく、実際のデータのように「治安がよくなった」と感じている人はほとんどいないでしょう。
多くの人が治安が悪くなったと言っていますし、最近では外国人が増えて治安が悪化した、なんてことも言われます。
※外国人の増加により治安が悪化したという一般的な事実はありません。機会があれば別の記事で書きます。

なぜ、体感治安と実際の治安はこんなに乖離しているのか。
ここからはただの憶測ですが、一番大きな理由はインターネットの普及でしょう。

「殺人事件」や「凶悪な殺人事件」の報に触れる機会が格段に増えています。
一昔前であれば、テレビのニュースか新聞・ラジオだけが事件を伝えるツールでした。
ニュースも新聞も、全国的な事件であれば遠方の事件を報じますが、そのほかは地域の地方欄に小さく出るだけでした。
インターネットであれば、地方の事件であってもすべて閲覧できます。

各メディアに触れる時間も、年々大幅に増加しています。
※ここでデータソースは出しませんが、マーケティング系の情報を調べれば出てきます。

遠くの事件、あたかも自分の身近で起きているかのように感じることで、治安の悪化を体感するのでしょう。

もう1点、ニュースが身近になったという理由もあるでしょう。
前までは、テレビや新聞を能動的に受信しなければ、情報は入ってきませんでした。
今は、スマホでニュースが流れてきますし、電車やタクシーに乗ればモニタにニュースが流れています。
街のモニターでもニュースが流れます。
なによりSNSで拡散されてきます。

外国人について、外国人滞在者や旅行者が大幅に増えているのは事実です。
でも実際に彼らと交流を持っている人はごくわずかですから、ほとんどの人にとっては「なんだか得体の知れない人たちが歩いている」と見えることもあるでしょう。
人間、よく分からないものには恐怖を感じます。
外国人をみるだけで恐怖を感じ、治安が悪化したと感じることもあるでしょう。

体感治安と実際の治安が違うことは、ただちに悪いことではありません。
ですが、「治安が悪化したから○○」というような、根拠のない差別や何かを言う人があれば、ちょっと立ち止まって考えてみて欲しいと思います。

もっとも、実際は治安が良くなったとは言っても、1年で約1,000件の殺人事件が発生しており、うち既遂事件は3割〜5割くらいなので、毎日1人が殺されているという単純計算が成り立ちます。
世界的にみても日本の過去を見てみても極めて少ない数字ですが、これをどう考えるかは人それぞれでしょう。

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