飲み屋のツケは1年逃げればOK!じゃなくなる改正。 民法(債権法)改正の消滅時効概要

消滅時効は一律5年に変更。2017年債権法改正のポイント

最終更新日:2017年9月12日

2017年、民法のうち債権法に関わる大きな改正がありました。
およそ120年間手つかずだった部分です。
まだ施行はされていませんし施行日は未定ですが、2020年までに施行される予定です。

2017年5月26日の国会で成立
2017年6月2日に公布されましたが、内容の周知徹底と充分な準備期間確保のため、施行は「公布の日から起算して3年を越えない範囲」となっています。

内容はいろいろありますが、ここでは消滅時効、いわゆる「もう時効だから払わなくてOK」となるルールの変更について簡単にまとめ。

現行法では、債権の内容にや職業によって細かく消滅時効期間が決められていました。

例えば、「飲み屋のツケ」や「タクシーの運賃」は、1年の短期消滅時効が設定されていました。
つまり、飲み屋のツケは、1年間催促などされなければ時効により消滅、もう払わなくよかったんです。

ほかには、弁護士の報酬は2年
リフォーム工事、医師の診療代や薬剤師の調剤代金は3年
家賃や給料は5年などなど

ちなみに、労働者の給与は「労基法115条」により2年と定められているので、そちらが優先されます。
労働法(特別法) > 民法(基本法) の原則です。

おそらく、改正法施行までの間に、こういった関連する法律も改正されていくものと思われます。
商法の商事時効も廃止となっています。

今回これらの細かい規定がすべてなくなりました。

一部の例外を除いて、ぜーんぶ一律になりました。


新しい「民法の一部を改正する法律」では

第百六十六条の見出しを「(債権等の消滅時効)」に改め、同条第一項を次のように改める。

債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

1項は主観で5年(1項時効)
2項は客観で10年(2項時効)

つまり、債権者が債権があることを知って(主観)から5年で消滅。
あるいは、債権者が知らなくても(客観)10年で消滅。

となりました。

飲み屋のツケの消滅時効は5年。
弁護士の報酬も5年。
ぜんぶ一律です。

ただし例外がありまして、人の生命や身体の侵害による損害については、客観が20年となっています。
例えば、医療ミスで手術中体内にガーゼを置き忘れたとか、発覚するのが10年経ってからということもあります。
そういう例外へのカバーですね。

もうひとつの例外は定期金債権で、主観10年、客観20年となります(167条)。

不法行為による損害賠償の消滅時効(724条)も少し変更がありました。
基本的には主観3年・客観20年と変わりませんが、「人の生命または身体を害する不法行為」については主観が5年になりました。
つまり、債務不履行でも不法行為でも同じ5年となったわけです。
今までの実務では不法行為だと3年なのに債務不履行だと5年なので、事業者の安全配慮義務などは便宜上、不法行為ではなく債務不履行だとしていました。
ですが今回の改正で違いがなくなったので、不法行為なのに債務不履行として処理する必要がなくなりました。

ちなみに、今まで法律用語で「時効の中断」「時効の停止」という、初学者や一般人にはわけがわからない用法がありましたが、これもなくなりました。
よりわかりやすく「時効の更新」「完成猶予」となっています。
内容も少しだけ変わっています。

全体として、いままで基本の消滅時効は10年でしたが5年(主観)と短縮されました。
ただ、いままであったいろいろな短期消滅時効がなくなったので、現実的には長期化されたとも言えます。

まとめると、

原則:主観5年・客観10年
定期金債権:主観10年・客観20年
不法行為:主観3年・客観20年
不法行為(人の生命や身体を害する):主観5年・客観20年


新旧対照条文
http://www.moj.go.jp/content/001227284.pdf

旧法:(債権等の消滅時効)
第百六十七条
債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
2債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。

新法:(債権等の消滅時効)
第百六十六条
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)
第百六十七条
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。

旧法:(定期金債権の消滅時効)
第百六十八条
定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。

新法:(定期金債権の消滅時効)
第百六十八条
定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から十年間行使しないとき。
二 前号に規定する各債権を行使することができる時から二十年間行使しないとき。


旧法:第七百二十四条
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

新法:第七百二十四条
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)

第七百二十四条の二
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条

第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。





ところで、なんで債務法じゃなくて債権法なんでしょう。

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